介護の現場でもっとも気を使うのが「事故やトラブルをいかに起こさないか」ですよね。
人が行うことなので、どんなに気を付けていても完全になくすことは不可能ですが、減らすことは可能です。
どのような事故がどのような経緯で起きたのかを分析し、予防し対策することが重要です。
今回は、以下のような内容でご紹介せていきます。
もっとも多発する「転倒・転落事故」
介護現場での事故で一番頻発する事故は「転倒・転落事故」です。
全体の介護事故の約8割がそれに当たります。
ただし、一口に「転倒・転落事故」と言っても、発生するパターンはさまざまで、一番多い発生パターンは「介護者が見ていないタイミングで、気付いたら転倒していた」というパターンです。
そのため、発見時にはすでに転倒されていて「なぜ転倒したのかが分からない」ということがあります。
このような事故が起こると、再発防止策として上がりやすいのが「見守り強化」です。
- ドアを開けっぱなしにする
- 頻繁に利用者の居室を巡回する
しかしこのような策を講じると、事故を防止することができるどころか、逆に問題が助長される可能性が出てきてしまいます。
事故を防止するための見守り強化のはずが、逆に事故が起きるリスクを上げてしまうことになるかもしれません。
それでは、どのような対策を講ずることが再発予防につながるのでしょうか。
転倒・転落事故を防ぐ対策
また、見守り意外にも「その人の身体機能に変化はないか」をしっかり観察することも重要です。
身体機能の変化が一番顕著に出やすいのが「入院などで数日介護施設を離れていた場合」です。
高齢であるほど短期間で筋力はいっきに低下します。
一見すると見た目は変わらない状態で帰ってきても、以前と状況が違う可能性があるということを視野に入れ、観察をより慎重にする必要があります。
発生件数は少ないが命の危険「誤嚥事故」
発生件数は少ないものの、いったん発生すると命の危険を伴う事故が「誤嚥事故」です。
実際に誤嚥事故で亡くなるケースは多くあります。誤嚥性事故は大きく分けて2つに分けられます。
- 窒息=ものを喉に詰まらせる
- 誤嚥性肺炎=食べ物や細菌が気管に入る
それぞれの事故が起きる原因と、対策を見ていきます。
窒息事故の原因と対策
まずは「窒息事故」が起きる原因と対策を見ていきます。
また、食事介助の際にはその人の飲み込むペースなども考慮しなくてはいけません。
口の中に前の塊がまだ残っているのに、つづけざまに口に入れることは誤嚥事故を引き起こす原因にもなります。
誤嚥性肺炎の起きる原因と対策
次に「誤嚥性肺炎」が起きる原因と対策を見ていきます。
そのほかにも、お正月のお餅など普段食べ慣れていないものを、慣れていない環境で食べると「嚥下ペース」が乱れてしまうので注意が必要です。
冬は要注意「ヒートショック・溺水事故」
介護現場での頻度は比較的少ないですが、冬の時期に特に注意したいのが「入浴時のヒートショックと 溺水」です。
入浴時のヒートショックの原因と対策
ヒートショックとは、「急激な体感温度の変化により、血管や心肺機能に重大なダメージを受けること」です。
ヒートショックにより起きやすい疾患は「大動脈解離・心筋梗塞・脳梗塞」などがあげられます。
特に高齢者の方が注意しなくてはいけないヒートショックですが、介護現場ではどのような対策ができるでしょうか。
持病がある利用者さんや、要介護度の高い利用者が多い介護施設は、特に注意しなくてはいけないですが、介護士だけで予防するのではなく、医師や看護士などの多種職としっかり連携する必要があります。
入浴前のバイタルチェックだけではなく、朝の起床時から変わったところがないかよく観察し入浴の判断をすることが大事です。
実際に起きた溺水事故の例
介護現場で溺水事故が起きることはあまり多くありません。しかしいったん発生すると死亡事故にも繋がる危険な事故です。
実際に介護施設で溺水事故が起きた例を見てみましょう。
この二つの事故は、どちらも車椅子に座ったまま入浴できる浴槽と書かれていますが、おそらく車椅子のように椅子に座った状態で入れる浴槽のことを指しているのだと思います。
どちらも数分目を離した間に事故が起きてしまっています。
上記の事故例以外にも考えられる溺水事故の、起きる原因と対策を見ていきたいと思います。
溺水事故の原因と対策
要介護者のレベルによっては、座位の安定、姿勢の保持が難しくなる場合があり、少し目を離しただけで溺水のリスクは高くなってしまいます。
利用者の状態の把握はもちろん、浴室内の環境整備や入浴前のバイタルチェックなどを徹底し、このような死角を生まないことが溺水事故を防ぐ上で重要です。
コロナ禍の今「感染症」
介護現場につきものの非常事態として「感染症」があげられます。
今の時期では全ての施設で「コロナ」の感染予防対策が徹底されているかと思いますが、冬の時期に流行するインフルエンザや、ノロウイルスのような感染性胃腸炎なども注意が必要です。
普通の健康な人なら重篤化しにくい感染症ですが、介護現場のように体力の衰えた高齢者が多い環境ですと命に関わってしまいます。
また、入居施設や通所施設だけではなく、訪問型のサービスも介護者がウイルスの媒体になってしまいやすいので注意が必要です。
感染症が発生する原因と対策
今感染症で一番気を付けているのが「コロナ」だと思いますが、コロナの感染予防対策を徹底することでインフルエンザや感染性胃腸炎などの感染症も同時に防ぐことができます。
感染症は突然現れるのではなく、必ず侵入経路が存在します。なので、一番大事なのは「感染経路を遮断する」ことです。
ただ、入居施設や通所施設は職員の出入りや利用者の出入りが必ずあります。
特に大型の入居施設などは働くスタッフも多いため、完璧に予防しウイルスを遮断することはとても難しいです。
感染力の強いコロナは無症状でも感染している場合があるので、いつ自分が感染媒体になってしまうか不安も大きいと思います。
職場ないではもちろん、普段の生活からしっかり感染予防をすることが大切ですが、どんなに気をつけていてもかかる時はかかってしまいます。
感染が確認された時の対応もしっかりマニュアル化し共有しておきましょう。
リスクマネジメントは組織単位で行う
介護は人を相手にした仕事です。
人には意思があり、その意思が様々な行動に結びつきます。
介護事故につながるリスクは人が相手だからこそ複雑で、どんなに熟練の介護士でも人の意思を完全に読み取ることはできません。
リスクを減らし、少しでも事故を減らすには、個人や一部署の意識だけではなく組織全体でリスク対応をしなくてはいけません。
「あの人はこう言ってるが、別の人はああ言ってる」
このように、”人によって言ってることが違う”ということが組織において一番ダメです。
リスク対応をマニュアル化し、人によってしている人としていない人、知っている人と知らない人が出ないようにしっかり共有する必要があります。
リスクマネジメントは、利用者さんを守ることはもちろん、従業員の心身の安全を守る上でとても重要です。
もし、今の職場の対応が不完全で不安を感じていながらも、改善が期待できないような場合は、ちゃんとしている職場に転職することをお勧めします。
まとめ
リスクマネジメントを組織単位でしっかりすることは、利用者さんの安全のためでもありますが、介護職の精神的不安を減らし立場を守るためにもとても重要です。
現在利用者さんの重度化が進み、現場で起こる介護事故のリスクはさらに上がっています。
事故につながるリスクはとても複雑です。なので完璧に全てをなくすことは難しいですが、一つ一つの小さなリスクを見逃さずに、丹念に減らしていくことで介護事故を減らすことができます。