【介護事故が起きる3つの原因】正しい予防・対応・対策で介護事故は減らせる

2019年3月14日、厚生労働省は2017年度の一年間で、転倒や誤嚥などの事故で亡くなった入所者が、特別養護老人ホームで1,117名、介護老人保健施設で430名で、少なくとも1547名いたと報告しています。

どこまでを「事故」と定義したかはわかりませんが、高齢者になればどうしても「誤嚥」や「転倒」のリスクは上がってしまいます。

現に、より要介護度が高い”特養”での介護事故が多いのも、リスクが高いからと言えます。

大事なことは「予防・対応・対策」を確実にすることで、介護事故を減らすということです。


 主な「介護事故」は大きく分けて3つの原因に分けられます。

  1. 自損事故
  2. 介護過誤
  3. 不測の事態

これらの事故は、どんなに気を付けて注意しても、人対人の介護なので、完全になくす事はできません。

しかし予防し減らすことはできます。

介護事故防止の取り組みには、介護士一人ひとりの介護技術の向上だけでなく、組織全体での取り組みも重要になってきます。

今回は、「介護事故を未然に防ぎたい。繰り返したくない」という方に向けて、

  • 介護事故はなぜ起こるのか
  • 事故が起きた時どのような対応をするべきか
  • 介護事故を減らす方法

などについてご紹介していきたいと思います。

介護事故が起こる3つの原因と予防・対策

先ほどの序文でも書きましたが、介護事故が起こる主な原因は「自損事故・介護過誤・不測の事態」の3つに分けられます。

介護事故の種類
  1. 自損事故→利用者自身が起こした事故
  2. 介護過誤→介護職員のミス
  3. 不測の事態→災害や予期せぬ事故

ある調査によると、介護事故が起こる割合として、「介助中の事故」は全体の2割ほどしかなく、「介助中以外」の事故が全体の7割を占めていたそうです。

つまり、事故の相関関係でいうと、全体の7割が介護職員による介護過誤ではなく、利用者自身に起因するものだったそうです。

だからと言って、介護職員や施設側に落ち度がなかったかと言うと、そうではありません。

事故は利用者さん自身によるものだったとしても、それを防ぐために私達は「予防・対応・対策」を徹底しなくてはいけません。

また、主な事故の発生場所として、「居宅内」が約4割と最も多く、次に「廊下」が16%、「トイレ」が11%となっています。

1.「自損事故」が起きる原因

自損事故とは、その名のとうり”自分自身が原因”で起こった事故の事をいいます。

自損事故が起こる主な原因は、

  1. 利用者の不注意、間違い
  2. 利用者の身体イメージの過信と、実際の身体能力の低下

などがあげられます。

「利用者の不注意・間違い」は意識レベルが低下していると起こりやすくなります。

要介護者には、意識レベルが低い方が多いです。

認知症ではなくても、軽脱水症状、廃用症候群(安静にすることで起こる様々な症状「筋萎縮・関節拘縮・褥瘡」)などによって、意識レベルが低下し、介護事故が起こるリスクが出てきます。

これらが原因となり、自損事故が起きてしまいます。

主な「自損事故」
  • 居室内や廊下などで、独立歩行時の転倒
  • 就寝・起床時にベットから転落
  • 立ち上がりの際に転倒

「自損事故」の予防策・対応策

自損事故を予防するために、必要なことは『ケアプランの見直し』です。

自損事故とは、極端に言えば「利用者さんが勝手に、自分で事故を起こした」ということです。

「居室で歩いていて、ベットやタンスの端に足をぶつけて怪我した」というのがそれにあたります。極端な話、このような事故は介護職の責任ではありません。

勝手に立ち上がって、勝手に歩いて、勝手にぶつけた。これは自損事故です。

施設内での全ての事故が、介護職の責任となれば、拘束や抑制のオンパレードになってしまします。

自損事故事態には、介護職の責任はありませんが、介護職には「自損事故がなるべく起こらないようにする」責任があります。

そのために必要なのが、「自損事故が起こらないようにするケアプラン」にすることです。

なので、「自損事故」を予防するには「ケアプランの見直し」が重要です。

予防策「ケアプランの見直し」
  • リハビリテーション
  • 適切な福祉用具の利用
  • 歩行訓練
  • 身体能力を維持向上させる環境作り
「自損事故」の対応
  1. 救命活動(場合によって救急車を要請)
  2. スタッフに応援要請
  3. 医療機関への受診
  4. 様子観察
  5. 関係各所への連絡
  6. 自損事故であることを明確にする

2.「介護過誤」が起きる原因

介護過誤とは介護職のミスで起きる事故です。

介護職員のミスが起きる主な原因として、

  1. 介護士の技量不足
  2. 介護士の意識不足
  3. 介護士の不注意

などがあげられます。

しかし、「介護過誤」が起こる原因は、決して介護士自身だけの問題ではありません。

介護過誤の原因
  1. 技量が低い介護士をそのままにしておいた施設の教育や研修制度が不十分
  2. 意識の低い介護士をそのままにしておいた理念やマインドを軽視している施設環境
  3. 介護士の注意不足働きにくい環境、きつい仕事や多すぎる業務内容
  4. チームワーク不足

これらは、施設側の責任であるとも言えます。

もし、今勤めている職場環境に、このような問題があり、改善されずいつ事故が起きても仕方ないような施設でしたら、要注意です。

こちらの記事では”ブラック施設の見極め方”について書いています。

逆を言えば、これと反対の施設は、介護士自身のミスが少ない施設になるということです。

主な「介護過誤」
  • 移乗介助時の事故
  • 車椅子の操作ミスによる事故
  • 誤薬
  • 間違った介護をした(ケアプランからの逸脱)
  • 連絡ミス

「介護過誤」の予防策・対応策

「介護過誤」を予防するために必要なことは「職場環境を見直す」です。

介護過誤とは介護職員のミスです。これは100%施設側の責任になります。

「介護過誤」はよく、個人の責任にされがちですが、個人の責任がゼロではないにしろ、職場全体の問題として捉えなければ事故防止には繋がりません。

予防策「職場環境の見直し」
  • 新人職員の教育・研修体制
  • 働きやすい環境にする(業務量・業務時間が適切か)
  • 申し送りメモなどが分かりやすい場所にあるか
  • チームワークはどうか
  • 見やすく覚えやすいマニュアル・指示書
「介護過誤」の対応
  1. 自損事故と同じ
  2. 家族への連絡は必ず「謝罪」から入る

3.「不測の事態」が起きる原因

「不測の事態」による事故とは、予想ができなかった事態によって事故が起こることを言います。

主な事故として、

  1. 地震や水害などの災害による事故
  2. 予測していない外部からの被害による事故

などがあります。

では、これらの事故は防ぐことができないのかと言ったら、そうではありません。

不測の事態を想像力を持って予想し、未然に対策をすることで防ぐことができます。

「不測の事態」に予防策・対応策

不測の事故の防ぎ方は、「想像力」の問題です。

不測の事態とは、「予想をしていない」ということですから、予想できていれば、不測ではなくなります。

しかし、人間は全知全能ではないので、全てを予測することはできません。

しかし、「地震・台風・火災」などといった災害などは、”経験した”施設などからの情報収集で、ある程度の予測を立てることができます。

予防策「想像力」
  • 防災対策(具体的な防災計画を策定)
  • 施設や事業所の耐震性の点検
  • 災害が起きた想定のシュミレーションをする
  • 災害時の避難経路を確認・避難訓練
  • 避難場所の把握
  • 災害発生時の食料・医療品・日用品の備蓄
「不測の事故」の対応
  1. 利用者を安全な場所へ避難
  2. 必要に応じて消防署等への要請
  3. 利用者数・利用者等のケガの把握
  4. 二次災害の有無を把握
  5. 関係者各位への連絡
  6. 事故(災害)報告

「予防・対応・対策」は具体的な行動ルールを決める

  1. 予防:(前もって予測しておいて、そういうことが起こらなように行動する)
  2. 対応:(実際に起こってしまった時に、とるべき具体的な行動)
  3. 対策:(起ってしまってことを、繰り返さないための具体的な行動)

対策は次への予防になります。何かが起こったときは、対応と対策の両方を考えなければいけません。

この「予防・対応・対策」はすべて行動でなければなりません。

考えているだけ、話し合っただけではいけません。

「意識を高める」や「見守り強化」は行動につながらないのでNGです。

具体的に「いつ・誰が・何をする」のかを決めて、実際の行動に移すことが重要です。

まとめ

介護事故はどんなに気をつけても、完全になくすことはおそらく出来ません。

しかし、正しい予防・対策をすることで、減らすことはできます。

また、ヒヤリハット事例を「介護事故を予防する」という観点で積極的に報告をし、共有し合うことも大切です。

少しでも介護事故を減らせれるように頑張りましょう!