【介護職】利用者さんに嫌われた時の対応・解決策|信頼関係の築き方

介護現場でよくある悩みの一つに「利用者さんとの人間関係、介助拒否や暴言、暴力」などがあります。

介護職から利用者への虐待は、ニュースにもなり注目されがちですが、反対の「利用者から介護職への暴言・暴力」はなかなか表に出てきません。

利用者も介護士も人間です。相性もありますし、行き違いや誤解が生まれることもあります。

認知症の方でしたら、周辺症状で「暴言や暴力」などの問題行動もよく見られます。

認知症の方であれ、クリアな高齢者であれ、多くの問題行動の裏には、そこに至る原因があります

こちらの働きかけで改善することもあれば、改善出来ないこともあり、全てを解決することは難しいです。

しかし、こちらの声かけや、対応の仕方、または信頼関係を築くことによって、多くの問題は解決できます。

もし、個人の力だけでは解決が難しい場合は、より困難な状況になる前に、上司や管理者に対策を求めてください。

雇用主は従業員を守る義務があります。

それで何の対策を講じてくれない場合や、改善が見られない施設は”ブラック施設”です。自分の精神を病んでしまう前に退職を検討してください。

こちらの記事では、ブラック施設の特徴についても書いていますので、ぜひ見てください。

今回は主にクリアな(認知症ではない)利用者さんから嫌われた時の対応・改善策と、信頼関係の築き方についてご紹介していきます。

  1. 利用者から嫌われた原因を明確にする
  2. 原因が明確な場合の解決策
  3. 原因がわからない場合の解決策
  4. 利用者との「信頼関係」の築き方
  5. ”要注意人物”だった利用者さんと信頼関係を築いた実体験

嫌われたきっかけ(原因)を明確にする

私も経験がありますが、介護の仕事をしていて、”特定の利用者さんに嫌われる、介助拒否される、口を聞いてもらえない”などといった経験をされた介護士は多くいると思います。

実際にある調査では、9割の介護職が”利用者から暴言や暴力を受けたことがある”と答えています。

それでは、特定の利用者さんに嫌われてしまう原因にはどういったものがあるのでしょか。

「嫌な態度や言葉を使った」「嫌な介助をした」などの介護士の不適切な対応などにより、嫌われる明確な理由がある場合と、

「寂しさから」「新人だから」「生理的に嫌い」など介護士自身には原因はないが、利用者さん自身に嫌悪する何かしらの理由がある場合があります。

まずは、自分がどんな状況なのかを確認し、それに合った対処法を探していくことが重要です。

ポイント
  • 原因が自分にあるのを自覚している(不適切な対応をした)
  • 理由がわからない(自覚していない)
  • 他の介護士やスタッフにも同じようなことをしているか
  • 認知症の症状によるもの

嫌われている原因を”自覚している”場合の解決策

特定の利用者さんに嫌われてしまっている原因を、自分で自覚している方は、その原因を取り除くことで、関係を修復できるかもしれません。

利用者さんに対する介助の仕方で、不快な思いをさせてしまった場合には、介護技術を磨くことや、その人が臨む介助の仕方をすることで改善できますし、

対応面で嫌われてしまった場合には、何が不快だったのかを振り返り、対応を改めることで関係を修復することができます。

介護技術や知識を上げる

まだ介護職を始めてまもない人や、身体介護にあまり関わってこなかった人は、不慣れな介助方法で利用者さんに不快な思いや、苦痛な思いを知らずにしてしまったかもしれません。

また、毎日の多忙な業務に追われ、雑な介助をしてしまったかもしれませんし、流れ作業のようにその人の気持ちを無視してしまった介助により、不快な思いを抱かせてしまったかもしれません。

そのような場合は、こちらの声かけの仕方次第で、利用者さんの受け取り方も変わってきます。

自分の介護技術の未熟さで、利用者さんに苦痛や不快な思いをさせてしまったのでしたら、介護スキルを磨くことで利用者との関係を修復できるかもしれません。

正確で安全な介助技術は、利用者さんの命にも関わりますし、自分の自信にもつながります。

また、「新人だから」という理由で難癖をつけ文句を行ってくる利用者には、介護技術を磨き資格をとって、スキルアップして成長することで利用者から”さすがプロだ”と思われるような介護士になりましょう。

また、利用者によって望む介助の仕方や対応の仕方は変わってきます。

もし自分の介助方法に納得していただけない場合は、他の介護士のやり方を真似てみるといいと思います。

対応がうまい人の真似をすることで、自分では気づかなかったことが見えてくるかもしれません。

ポイント
  • 介護の資格を取得する
  • 勉強をして介護の知識を上げる
  • その人がどんな介助方法を望んでいるのか聞く
  • 対応がうまい人や先輩のやり方を学ぶ

コミュニケーション能力を高める

介護士の立場から見れば、”大勢の利用者のうちの一人”として利用者を見て、毎日時間に追われ一人ひとりに十分に対応することが難しいことが、当たり前になってしまっているかもしれません。

しかし利用者も一人の人間です。介助を受ける側の立場から見れば、

「雑に扱われている」「尊重してもらえていない」と感じてしまい、それらが嫌われる原因になっているかもしれません。

利用者さんと信頼関係を築く上で、重要なスキルの一つに”コミュニケーション能力”があります。

コミュニケーションは言葉だけではなく、”態度や表情”からもとることができます。

人間は良くも悪くも敏感に感情を読み取ることができます。”態度や表情”はむしろ上辺だけの言葉よりもより相手に届くものです。

また、暴言や介助拒否などの問題から、その人の気持ちを読み取ることも大事です。

エスパーじゃないので完璧に理解することは難しいですが、その人の気持ちに”共感し、話に耳を傾け、気持ちを受け止める”ことで問題行動がなくなることもあります。

実際に私も介護の現場でたくさん経験してきました。

どんなに業務が忙しくても、コミュニケーションをしっかり取り、利用者さんの気持ちに寄り添った介助をすることで、信頼関係を築き、利用者さんが”不満や不快”な気持ちを抱かなくて良い環境を作ることができます。

コミュニケーションのポイント
  • 笑顔で接する
  • アイコンタクト
  • ゆっくり話す
  • 気持ちに共感してあげる
  • 関心を示してあげる
  • 相手を尊重する言葉使いをする
  • ”手を握る”などの優しいスキンシップをとる

自分の話し方、対応を振り返る

家族や友人関係の中でも、知らず知らずに自分の言葉使いや言い方・対応で相手に不快な思いをさせてしまっていたという経験は誰しもあるかと思います。

介護の現場も”利用者と介護士”の人間関係です。

悪気がなく無意識に言った言葉や、その場の勢いで言った発言、または急いでいてないがしろな対応をしてしまったことで、利用者さんが傷付いたり、不快な思いをして、それが原因で嫌われてしまうこともあります。

利用者さんから直接注意を受ければ気づきますが、直接文句をいう利用者さんばかりではありません。

そういう場合は、”心当たりがないのにいつの間にか嫌われている”という状況になってしまいます。

介護の仕事に限らず、人間関係において”人が発する言葉”はとても大きな影響を与えます。

利用者さんを一人の人として、尊重することで、投げかける言葉や対応も変わってきます。

人間誰しも”自分のことを尊重してほしい”と思っています。高齢者の方の中には特にプライドの高い方もいます。

特別扱いをするのではなく、”人として大切に思う”という気持ちがあれば、自然と言葉や対応に現れてくると思います。

今までの自分の対応や、言葉使いを一度振り返り、見直すことで利用者さんとの今後の関係をよくすることができます。

ポイント
  • 相手を尊重する気持ちもって接する
  • 自分の言葉使いや対応を振り返る
  • 対応や言葉使いを間違えたら謝る

嫌われる理由がない(思い当たらない)場合の解決策

『気にしない』ことも大事

自分には心当たりがなく、上記のような対応をちゃんと取っていても改善されず、それでも利用者さんに”文句を言われる、、暴言を吐かれる、介助拒否される”といったことがあるのでしたら、

それはあなたに問題があるのではなく、利用者さん自身の問題かもしれません。

文句や暴言などを言う人は、心の中で”寂しさや孤独”を感じていることが多いです。

介護士としてできることは、その人の寂しさや孤独な気持ちに”共感し、受け止めてあげる”ことです。しかしそれにも限界はあります。

そんな時の、一番の対応策は『気にしないこと』です。

理由もなく、自分の気分や好みで、単純に人を嫌い攻撃してくる人は、高齢者に限らずどこにでもいます。

私も経験したことがありますが、そういう人は心が寂しい人なんだと思います。しかしかなり精神的に辛いですよね。

そういう人たちの感情に、いちいち振り回されていたら精神が持ちません。なので『気にしない』ことが一番です。

介護の仕事は”人に好かれるため”にするのではありません。

もちろん好かれることでモチベーションも上がり、充実感も増しますが、全ての利用者に好かれる必要はありません。

それよりも大事なことは、”その利用者さんにとって必要なケアやサービスを安全に提供する”ことです。

仕事とはいえ、人と人との関係なので、お互いに尊重し合うのは大事ですが、介護士は利用者さんに好かれるために介助をするわけではないので、あまり相手の反応に気を取られすぎなくても大丈夫です。

それに、一人に嫌われてしまっても、もっと多くの人からはちゃんと必要とされています。

『気にしない』ことは最初はかなり難しいですが、意識していくことでだんだん慣れてきます。

※『気にしない』のは相手の反応です。どんなに嫌われても人として尊重し、その人の気持ちを考える対応は忘れないようにしましょう。

ポイント
  • 『気にしない』ことを意識する
  • 全ての利用者に好かれなくてもいい
  • 好かれるために介護をするのではない
  • 他の大勢の利用者さんからはちゃんと必要とされている
  • 相手を尊重する気持ちは忘れない

上司に相談する

利用者さんからの介助拒否や暴言、暴力などで、仕事に影響が出てきたり、精神的に苦痛を感じる場合には、すぐに上司や管理者に相談しましょう。

介護をする私たちも守られるべき一人の人間です。

利用者さんからの理不尽な暴言や暴力、悪質な対応は容認していいものではありませんし、”介護士だから我慢しなくてはいけないもの”でもありません。

「相手は高齢者だから」や「認知症だから仕方ない」ではなく、そのような利用者さんに対しては、上司や管理者はしっかりとした対応策を考えなくてはいけません。

自分で解決できない内容は、まずは一度先輩や上司に相談し、他の介護士も同じような経験がないかなどを調査し、どうするべきかを考える必要があります。

※改善策を求めても対応してくれない施設ならブラックです。退職も視野に入れるべきです。

ポイント
  • ”介護士だから我慢しないといけない”ことはない
  • 自分で対応できない範囲か
  • 他の介護士にも聞いてみる

利用者さんとの『信頼関係』の築き方

利用者さんは日々色々な不安を感じて生きています。

だんだん衰えていく体や、自分でできることが少なくなっていく恐怖、お世話をされなくては生きていけない現状、将来のこと。穏やかに受け止められる人もいれば、受容できない人もいます。

その人の立場になってみないと分からない気持ちです。

私は、重度障害者の介護をしていたので、自分と同じような年齢の利用者さんや、交通事故や病気で不自由になった方や、生まれた時から人に助けてもらわなくては生きていけない方々を見てきました。

そのような方々の介助をする中で、「その人にしかわからない痛み」がある事を知りました。

私は、できるだけ利用者さんの感情を受け止めて、どんなに負の感情をだされても「変わらない」ことでその人の”安心”できる介護士になろうと意識していました。

自分の経験を踏まえて、「利用者さんとの信頼関係の築き方」をご紹介していきます。

相手の感情に影響を受けない

私が、利用者さんと接する中で、特に意識していることは「相手の感情に影響を受けないこと」です。

利用者さんが怒っていたり、イライラして当たってきたりしても、その”負の感情”に影響されてはいけません。

感情は伝染しやすいものです。一人でも負の感情を出していると、その周りの人たちも影響を受け、同じような感情になってしまいます。

一対一の関係でも、相手がなぜかイライラして攻撃的に接してきたら、自分も同じような態度で接してしまう、ということが経験あると思います。

しかし、介護の現場でそのような対応をすれば、利用者さんからは信頼されません。

自分に置き換えて考えてみても、何か嫌なことがあって周囲の人にあたってしまったとして、

ある人は同じようにイライラした負の感情で接してきますが、ある人はいつもと変わらない態度で接してくれたら、変わらない態度で接してくれた人の方をより信頼すると思います。

”何かあれば変わってしまう人”を信用できないのが普通だと思います。

介護士も人間なので、全ての対応を受容できるわけではないと思いますが、できるだけ利用者さんの感情を受け止められる器が必要だと思います。

いつも笑顔を意識する

次に、介護の中で意識していたいことは、「笑顔」です。

当たり前のことと思われるかもしれませんが、意外と意識しないと、いつの間にか無表情になっていたり、顔をしかめて仕事をしていることがあると思います。

ましては、人手不足のなか働いている方は、日々の業務に追われ、気持ちが疲弊し余裕がなくなってしまっている方もいるかと思います。

先ほど、「人は人の感情に影響を受けやすい」と言いましたが、明るい感情も人に伝染します。

介護スタッフが笑顔でイキイキと働いている姿は、施設全体の活気にもなり、利用者さんにもいい影響を与えます。

ただ、介護スタッフが笑顔でイキイキと働くには、働く環境も大きく影響してきます。

楽しく働ける職場環境であるか、業務に追われ作り笑顔になっていないか、業務の負担が偏っていないか、など施設全体の環境も見直す必要があります。

もし今の職場では、やりがいを持って笑顔で働けないのでしたら、自分にあった施設を探すのもありです。

話をよく聞いてあげ、受け止めてあげる

次は、「利用者さんの話をよく聞いてあげ、受け止めてあげること」が大事です。

介護士に必要なコミュニケーション能力で、「受容・傾聴・共感」というものがあります。

多くの利用者さんは、家族と離れ、施設の中で”その他大勢”としてで暮らすことに、孤独や寂しさ、必要とされていない虚無感を感じてしまいます。

家族や友人の面会がなかなか無い方は特にそうです。

利用者さんの問題行動の原因が、このような寂しさや孤独から出てくることも少なくありません。

私たち介護士は、利用者さんの気持ちに寄り添い、心を傾けることで、「自分に関心を持ってくれている」と感じ心が満たされます。

忙しい中、一人ひとりと長く話したり、コミュニケーションをとるのは難しいかもしれませんが、こちらから利用者さんに積極的に声をかけ、時間があれば話を聞いてあげることも介護士の大事な仕事です。

優しいスキンシップ

スキンシップを取ることも、信頼関係を築く上で大切です。

人は肌から安心感や温もりを感じます。子供はもちろん、大人になっても、高齢者になっても、人の温もりはその人に大きな安心感を与えます。

言葉がなくても「あなたを大切に思っている」という気持ちがダイレクトに伝わるのが優しいスキンシップです。

しかし、スキンシップには注意も必要です。

利用者さんの中には、触られることに慣れていない人もいますし、いきなり触られたらびっくりして引いてしますかもしれません。

親しくなろうとするあまり、初対面で急にスキンシップを取ろうとするのも要注意です。まずは笑顔で話しかけ、心が開いてきたら、握手など軽いスキンシップを取るのがいいです。

しかし、自分の気持ちを押し付けるようにむやみに触るのではなく、あくまで利用者さんに気持ちを尊重したスキンシップをすることが大切です。

また、触れる場所も、肩や背中、手の甲など比較的、抵抗を感じにくい場所に触れるのもポイントです。

不安感からイライラして、問題行動を起こす利用者さんに、声をかけ、話を聞いてあげながら優しく背中を撫でていく中で、落ち着いて問題行動が減った。ということもあります。

スキンシップのポイント
  • むやみに触れない
  • 突然触れない
  • 距離感を大切にする
  • 肩や背中、手の甲などに触れる

まとめ

介護の仕事を長くしていると、いろんな利用者さんに出会います。

優しくて穏やかな人、短気で怒りん坊の人、マイペースな人、トラブルメーカーもいれば施設内のムードメーカーのような方もいます。

人間同士なので、嫌われることもありますが、必要としてくれる人もいます。

介護の技術や知識を高めていくことは大切ですが、働く上で大切なことは「個人の尊厳を守り、尊重する気持ち」だと思います。

高齢者や障害者を見下したり、軽視するような人は、利用者さんと信頼関係を築くことは難しいし、本当の意味で介護の仕事に”やりがい”を感じることはできないでしょう。

もし今の職場に限界を感じていたら、他の施設形態や訪問介護など、働き方を変えてみるのもおすすめします。

こちらの記事では「向いている施設形態」について書いていますので、見てみてください。

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