
こんにちは、介護福祉士のうまです。今日は私自身も他人事ではないテーマ「親の認知症」について考えてみたいと思います。
自分の親や配偶者に対して「もしかしたら認知症かも…」と思ったことはありませんか。私自身親が70歳を超え今はまだまだ元気ですが、たまに「あれ?」と思うことが多くなりました。
人は年齢を重ねると少なからず、理解力や記憶力が低下していくのは仕方ないことではあります。しかしもし身近な家族の行動に「いつもと何か違う」と感じたのなら、もしかしたら認知症を疑ってみなくてはいけないかもしれません。
今回は親や身近な家族が「もしかして認知症かも…」と思った時に相談できる場所、機関をご紹介します。
認知症とは?

認知症の有病率は、65歳以上70歳未満で1.5%、85歳では27%に達します。日本における65歳以上の認知症患者はすでに240万を超えているという推計もあります。さらに団塊世代が65歳以上になる2015年には250万人、2020年には300万人を超すと推定されています。高齢社会の日本では認知症が今後ますます重要な問題になることは明らかです。
厚生労働省「みんなのヘルスケア」より引用
「認知症」は病名ではなく特有の症状を総称する言葉です。よく勘違いされる、老人性の物忘れとは現れる症状に大きな違いがあります。
老人性の物忘れでは、体験した一部のことを忘れたり、忘れていることを自覚しているが、認知症は自分が少し前に何を体験したかを思い出せなくなり、次第に体験したこと自体も忘れていくようになります。
認知症と物忘れの症状を比較してみると、似ているようで大きな違いがあるのが分かります。
物忘れ | 認知症 |
・体験の一部をわすれる | ・体験したこと自体を忘れる |
・ヒントがあれば思い出す | ・ヒントがあっても思い出せない |
・何を食べたか忘れる | ・食べたこと自体を忘れる |
・日付や曜日を間違える | ・日付や曜日がわからない |
・人格に変化はない | ・人格に変化が出る(暴言.暴力.無関心) |
・日常生活に影響ない | ・日常生活に支障をきたす |
特に、初期の認知症の症状で気づきやすい事例として以下のものが主に挙げられます。

親や配偶者のいつもと違う異変に一番気づきやすいのは家族です。ですが、一番身近だからこそ「そんなはずはない」「もう歳だから仕方ない」と目をつぶり現実を受け止めることができず、現実を心理的に打ち消してしまいがちです。
育ててくれた親が、ずっと一緒に連れ添ってきた夫や妻が変わっていくことは簡単に受け止められることではありません。「なんでこんなこともできないの」「ちゃんと考えてないから分からないんだ」など思ってしまう気持ちもわかります。
自分の親だからこそずっと変わらずにいてほしいと思ってしまいます。
しかし、現実を受け止め早期に認知症を発見することで進行を遅らせ、家族とより長く豊に暮らせる時間が長くなるかもしれません。
認知症の主な原因疾患
認知症になる原因の疾患として大きく4つがあります。

原因 | 特徴 | |
アルツハイマー型認知症 | 大脳皮質の神経細胞が減少して、脳が萎縮することで発症 | 女性に多く見られ、症状は緩やかに進行。知能全般の低下と、人格の変化が見られる |
血管性認知症 | 脳出血や脳梗塞を原因として、脳への血流が遮られ、神経細胞が死滅していく疾患 | 男性に多く見られ、症状は発作が起こるたびに段階的に進行していく。人格は比較的守られ、知能低下の仕方にはムラがある |
レビー小体型認知症 | 大脳皮質の神経細胞にレビー小体と呼ばれる物質が現れることで、神経細胞が破壊され発症 | 男性に多く見られる。症状は1日の中で大きく変わりやすく幻覚やパーキンソン病によく似た症状が現れる |
前頭側頭型認知症 | 大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することによって発症 | 主な症状は、初期からの人格変化です。意識の低下や無関心の他に、社会のルールが分からなくなり、万引きなどの行動をしてしまう。 |
「認知症かも」そう思ったらいくべき機関
親や身内が「もしかしたら認知症」かもと思ったら以下の3つ機関への相談をぜひ検討してみてください。
かかりつけ医に相談

「もしかして認知症?」そう思ったらまず最初に、専門医の診断を仰ぐことが必要になってきます。しかし突然「認知症かもしれないから一緒に病院に行こう」と言っても本人が素直にいくとは限りませんし、無理に連れて行っても正しい診断を下せないかもしれません。
まずは本人の気持ちを尊重することが大切です。いきなり認知症の専門外来や精神科病院へ行くのではなく、本人が行き慣れている『かかりつけ医』へ相談してみてください。
もしそこで必要と判断されれば、認知症の専門外来への紹介や情報提供をしてくれるはずです。
本人への声かけの仕方によっては、「自分を馬鹿にしている」や「自分はまだボケてない」と余計に反発してし受診拒否につながる可能性もあります。ぜひ本人の気持ちを尊重して「あなたが心配だから」や「私たちのためを思って一緒に行こう」と伝えてみるのがいいかもしれません。
地域包括センターに相談

もしかかりつけ医にあてがなく、「いきなり専門医へ行くのが難しい…しかし一度誰かに相談してみたい」そういう時は『地域包括センター』に相談してみてください。
地域包括センターは認知症に限らず、高齢者の生活に関わるあらゆる相談を受け、解決へ導いてくれる「総合相談窓口」です。
『地域包括センター』は自治体によって呼び名が異なることがありますが、約人口2万人に対して1カ所を目安に設置されています。
地域包括支援センターでは、保健師(看護師)・社会福祉士・主任ケアマネージャーなどの専門職が配置され、それぞれの専門性を生かし地域の高齢者をサポートしてくれます。
地域の高齢者を家族だけではなく、地域全体で見守り、何か困ったことがあれば専門的な知識やネットワークを駆使して問題を解決してくれるというところが『地域包括センター』です。
相談だけではなく、さまざまな申請などの手続きのサポートもしてくれます。これからさらに迫り来る高齢化社会になくてはならない一番身近な機関です。
認知症初期集中支援チーム

『認知症初期集中チーム』とは、『地域包括センター』が窓口となって実施している訪問型の認知症専門チームです。
認知症の早期診断・早期対応を図るため、初期段階から複数の専門医が関わります。家族やかかりつけ医からの情報を元に「医師・看護師・精神保健福祉士」などがチームを作り自宅へ訪問します。
約半年間に4~5回通い、いろいろな話をしながら信頼関係を築いていくことで、今まで認知症に関する医療を拒否していた人が、介護保険を申請し通所サービスなどを利用するようになったというケースも増えてきています。
2018年(平成30)からはすべての市町村に設置されています。
おまけ「認知症カフェ」

手遅れになる前に
認知症は”ある日突然家族の名前が分からなくなり、何もできなくなる”といった分かりやすい病気ではありません。
最初は分からないうちにゆっくり進行していきます。「お鍋の空焚きが続く」「同じものばかりを買ってくる」など一見ただのうっかりに見える行為も実は認知症の初期症状だったということもあります。
重要なのは、いち早くその異変に気づくことです。ゆっくり進行するからこそ早めの対応で認知症の症状を遅らせることができ、焦らずこれからの準備をすることもできるようになります。
高齢者人口の増加とともに、認知症患者も増加し2025年には高齢者の5人に1人は認知症になっていると言われています。
人ごとではない問題なので、私も両親がいずれ認知症になったときに慌てず対処できるように準備していこうと思っています。