自宅での家族介護で限界を迎える前にできること|介護負担の軽減の仕方

うま
うま

こんにちは、19歳で初めて介護の仕事に就き、色々あり一般企業に勤めたりもしましたが、現在は介護歴7年で、介護福祉士の”うま”です。

平成28年の厚生労働省による国民生活基礎調査で、要介護者と同居している介護者の、日常的なストレスの有無を見ると、「ある」が68.9%、「ない」が26.8%となっています。

自宅で日常的に介護をしている方の、約7割の方が何らかのストレスを抱えているという現状がわかります。

  • 家族の介護が精神的に辛い
  • 身体的に負担になっている
  • 軽減できる方法が知りたい

このような悩みを持っている方に、少しでも介護の負担が軽減できるように、「精神的・身体的な負担の減らし方」や「悩んだときに相談できる窓口」についてご紹介していきたいと思います。

自宅での家族介護での主な悩み

自宅で介護している方のストレスの原因となっている主な悩みとは、どういったものがあるのかを、厚生労働省が調査した内容をもとにベスト5まで見てみると、以下のようなものでした。

  1. 家族の病気や介護
  2. 自分の病気や介護
  3. 収入・家計・借金等
  4. 家族との人間関係
  5. 自由にできる時間がない

一番多かった悩みは「家族の病気や介護」約7割以上を占めていました。その他にも、金銭的な悩みや家族との人間関係、自分の時間が持てないことがストレスの原因になっていました。

介護は、いつ終わりが来るか分からない、先の見えない不安や、今後症状の悪化や病気により、さらに悪くなるのではないかという恐怖などが、介護者の大きな悩みになっています。

ストレスが限界を超えると「介護うつ」にもなってしまい結果、無理心中や介護者の自殺、要介護者への虐待や殺害などの悲しい結末を招いてしまいます。

近年記憶に新しい事件として、2019年に当時22歳だった女性が、いわゆる「介護疲れ」で、同居し介護していた祖母を殺害した悲しい事件がありました。

認知症で要介護4の祖母を、若干22歳の子が親族の助けを受けれずに、たった一人で孤独に戦っていた背景を思うと、殺害という一番悲しい結末を迎える前に、周囲に誰か一人でも彼女の助けになれる人はいなかったのかと考えてしまいます。

家族介護は”身内の問題”と捉えやすい傾向から、どうしても閉鎖的になってしまいがちです。

先の見えない家族の介護をどのようにして継続していけるのか、孤独になる前に、限界が来る前に出来ることはないのか、一つ一つ見ていきたいと思います。

自宅での家族介護するポイント『精神的な負担』を減らす

自宅で介護をする上で一番大事なことは、『精神的な負担』をいかに軽減できるかです。

先ほども言いましたが、家族介護は閉鎖的になりやすいです。周囲に相談できなかったり、相談することが恥ずかしい事だと感じ、結果一人で抱え込んでしまい、介護うつなどの精神的な病になってしまいます。

精神的な負担を減らすために必要な3つのことを見ていきます。

  • 一人で抱え込まない
  • 生活の全てを「介護」にしない
  • 限界を感じる前に「施設入所」を考える

一番重要『一人で抱え込まない』

家族介護を継続していくために重要なことは『孤独にならない』ことです。そのために必要なことの一つ目は、「一人で抱え込まない」ことです。

介護うつになってしまう方や、要介護者への虐待や暴言を行ってしまう方の多くは、「介護は家族が担うものである」と考え、孤独に介護と戦っている方々です。

周囲に相談をできず、たった一人で介護を担って行くことは不可能です。孤独にならないために、一人で抱え込まない介護を目指しましょう。

そのために、介護のプロであるケアマネや介護士に相談することや、周囲の友人に話を聞いてもらうこと、地域の相談窓口や行政の力も借りましょう。

仕事をされている方は、職場に今の置かれている状況を伝えることも大切です。条件によっては国の「両立支援制度」を利用することで長期間の介護休業を取得できますし、その際の金銭的な補償も受けることができます。

詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。

大事なことは”要介護者と自分だけの世界”にならないことです。使えるサービスや制度を活用してください。「一人で全てをしないといけない」と思わないでください。

生活の全てを『介護』にしない

自宅で介護をする上で重要なことは「生活の全てを介護にしない」ことです。

自宅で介護をすると言うことは、365日要介護者と向き合わないといけないと言うことになります。私たち介護士が介護の仕事を続けられるのはあくまで”他人”だからと、”仕事だから”と割り切れるからです。

しかし、自宅で介護をされている家族は、休みがなく常に危険と隣り合わせの介護を365日休みなく行っています。

週に数回の訪問ヘルパーや、日中のデイサービスなどで24時間みっちり介護をしている訳ではなかったとしても、夜はトイレ介助に起きないといけなかったり、認知症を患っていたら呼び出しや、徘徊で十分な睡眠を取れないかもしれません。

仕事と介護を両立されている方は、仕事が終わったら自宅では介護が待っているという状況になります。このような状況が続くことが介護者の大きな負担になってしまいます。

自宅で介護に専念されている方は、要介護者とのみの関わりになってしまい、次第に社会からの疎外感から孤独を感じ、結果逃げ場を失い介護うつになってしまいます。

介護者の精神的な負担を減らすためには、介護者が息抜きできる時間を確保することが重要です。一週間に一回でも丸一日介護をしなくても良い日があるだけで、負担を多少減らすことができます。

自分の時間を作る方法
  1. ショートステイを利用する
  2. 身内で話し合い主な介護者の負担を分け合う
  3. 小規模多機能型居宅介護を利用する
  4. 夜間対応型訪問介護のを利用する

限界を感じる前に『施設入所』も検討する

「介護は家族がするべきである」と思わないでください。

限界を感じる前に施設に入所するという道も検討してください。終身でみてくれる特別養護老人ホームは入所するのに条件などもあったり、場所によっては待機することもあるので、担当のケアマネに相談してみてください。

有料老人ホームは、公的な介護施設よりも費用がかかってしまいますが、基本的に待機などはなくすぐに入所することができます。

「限界」が来る前に、施設へ入所を検討してみてください。入所することで要介護者、介護者の両方が豊に暮らせる日常を得ることができるようになります。

身体的な負担を軽減する

自宅で介護をする際に、気をつけないといけないのは、精神的な負担の軽減ともう一つ「身体的な負担」の軽減があります。

平成28年の厚生労働省の介護実態調査によると、主な介護者の年齢は約7割が60歳以上となっています。いわゆる「老老介護」です。

また働き盛りの40代50代でも、仕事と介護を両立していくには相当な体力が必要です。そこで、介護者の身体的な負担を少しでも軽減できる方法を3つご紹介します。

介護保険で使える福祉用具を活用

身体的な負担を軽減するのに、介護保険で利用できる福祉用具を活用することも一つの方法です。

トイレ介助や入浴介助などは、介護が慣れている介護士でも、腰痛になったり体を壊してしまう原因になってしまいます。

また、認知症の介護をされている方は、徘徊などにも気を付けなくてはいけないので、気を休めることができず、身体的にも疲弊してしまいます。

そこで、介護保険で利用できる「福祉用具」を活用し、少しでも介護の負担を減らせるようにしてみてはいかがでしょうか。

要支援1~2要介護1要介護2~5
車椅子
車椅子付属品
特殊寝台(介護用ベッド)
特殊寝台付属品
床ずれ防止用具
体位交換機
手すり(取り外し可能)
スロープ
歩行器
歩行補助杖
徘徊感知器

また、介護保険でできる自宅改修で手すりをつけたり、床材を変えたりすることで、要介護者が今までできなかった動作ができるようになったり、介助の際に介護者の負担を軽減することができます。

こちらの記事でも紹介していますので参考にしてください。→「住み慣れた自宅を介護保険で住宅改修する方法」

短期入所サービスを利用する

慢性的な介護疲れにならないために、「短期入所サービス(ショートステイ)」も利用してみてください。

短期入所サービスとは、自宅で介護を受けている方が一日から最大30日までを上限に、短期で入所し、食事や排泄、入浴の介護を受けることができる介護施設です。

短期入所サービスは自宅で孤立しがちな要介護者の孤独感解消や、心身機能回復のためだけではなく、介護者であるご家族の精神的・身体的負担軽減のために存在しています。

介護保険適用で利用できる対象者は、要支援1~2、要介護1~5の認定を受けている方です。

介護保険外の実費費用は、要介護度によって異なりますが、一番軽い要支援1ですと500円/日ほどで、要介護5だと1000円/日くらいになります。

もし検討する場合は、担当のケアマネジャーに相談してみてください。

夜間対応型訪問介護

自宅での介護で特に苦痛に感じるのが、夜間のトイレ介助や呼び出しによる睡眠不足です。

認知症を患っている場合には、一晩で何度も呼ばれ介護者が全く眠ることが出来ないということもありますし。

また高齢により排尿機能が衰えている場合にも、夜間にトイレに行く回数が増えるので、その都度介助しなくてはいけなくなります。

また、「深夜に何か不測の事態が起きるかも」という不安感から、しっかり熟睡できず、慢性的な疲労になってしまう方もいらっしゃいます。

そんな時に利用したいのが「夜間対応型訪問介護サービス」です。

夜間対応型サービスは、夜間の時間帯に訪問介護ヘルパーが自宅に訪問し、排泄の介助や安否確認をしてくれるサービスです。

利用できる対象者は、要介護1以上の認定を受けている方で、要支援1.2の方は利用することはできません。

夜にしっかり睡眠をとることは、心身機能の回復にとってとても重要です。もし夜間の介助が負担になっていて、心身の不調を感じるのでしたら「夜間対応型訪問介護サービス」の利用を検討してみてください。

介護に悩んだ時には『相談窓口』を活用する

家族介護で限界を感じる前に、誰かに相談することが大切です。介護うつになってしまう方の多くは、一人で問題を抱え込み、誰にも相談できずに限界を超えてしまった方です。

限界を感じる前に、どのような相談先があるのかを知って、何かあった時や小さな悩みでも吐き出せる場所を見つけてください。

主な相談先
  • 地域包括センター:高齢者に関わる様々な相談に乗ってくれる機関
  • かかりつけ医:要介護者の身体的または精神的な悩みを医療的な観点から相談
  • 担当のケアマネジャー:ヘルパーやケアマネは介護者の負担も軽くする役割があります
  • 利用している事業所のスタッフ:身近で話しやすいスタッフに相談
  • 無料の電話相談:認知症の悩みや介護の悩みの相談に乗ってくれます
  • 認知症カフェ:認知症の本人や家族、専門職や地域住民が気軽に立ち寄り情報交換する
  • 介護家族の会:似た境遇を持つ家族や、今まさに介護に直面している人の集まり
認知症の悩み相談先

社団法人認知症の人と家族の会

まとめ

自宅での家族介護は、経験者にしか分からない苦労があります。私も学生の頃に祖母が認知症になり、自宅で家族介護をしていました。

両親が共働きだったので、両親に変わって学校を休んで祖母の介護をした時もありましたし、主に母が苦労している姿をたくさん見てきました。

祖母の介護がきっかけで介護の仕事をするようになりましたが、より一層家族介護の大変さがわかるようになりました。

24時間365日介護に奮闘しているご家族が、少しでも心身の負担を軽減できるように、今回ご紹介した内容をぜひ試してみてください。