介護の現場や、自宅で介護をしている家族の方、多くの介護者が直面する悩みとして、”介護拒否”があります。
「ご飯を食べてくれない」、「お薬を飲むのを拒否する」、「言うことを聞いてくれない」
なぜ”介護拒否”はなぜ起こるのでしょうか。
”拒否”とは、自分の思いに反したことを強いられたときに出てきます。拒否をした背景には何があるのか推測することが大切です。
介護が介護者からの一方通行になれば、利用者さんとの意識のズレが生じ、結果「介護拒否」につながります。
認知症であれば、介助をされる意味がわかっていないためや、恐怖心から拒否しているかもしれません。
なぜそれをしないといけないのかを理解していないかもしれませんし、プライドを傷つけられるのを恐れているかもしれません。
「介助」はただ単に必要だからするのではありません。介助を受ける側も、する側も人間ですので、そこには信頼関係が必要です。
その人の気持ちを考えて、尊厳を大切にし、本人の意思を尊重した介助をすることが大切です。
こちらの記事では、利用者さんとの「信頼関係の築き方」についてご紹介しています。
”介護拒否”が起こる4つの原因と対応策

介護拒否をが起こる原因として、主に4つがあげられます。
- 利用者自信のプライドが高い
- 介護者を信頼していない
- 体調が悪い
- 認知症が原因
これらの原因と、対策をひとつずつ見ていきます。
利用者自信のプライドが高い

介護拒否が起こる原因の一つに、「利用者さん自身のプライドが高いため」があります。
高齢者に限らず、自尊心やプライドが高い人は、人から何かを指示されたりお世話を受けることをとても嫌がります。
高齢者になって、自分でできることが少なくなり、人からお世話を受けなければいけないことに、プライドや自尊心を傷つけられ、介護拒否に繋がってしまう場合がります。
プライドが高い人への介護拒否の対応は、「自尊心を守る」「プライドを傷つけない」ということが大切です。
認知症の方でも、役割を与えたり頼ったり、持ち上げたりすることで自尊心が適度に刺激され、協力的になってくれることもあります。
「自分のことは自分でできる」とプライドのある方は、介助を受けることを”情けない”と感じたり、”プライドを傷つけられた”と感じ介護拒否につながることがあります。
まずは、本人の気持ちを尊重して、無理強いしないことがポイントです。そして、その方の気持ちを受け止めてあげることが大切です。
- 無理強いしない
- 一度気持ちを受け止める
- 自分で出来ることは自分でさせる
- 納得するやり方を探す
介護者を信頼していない

介護をする上で「信頼関係」がとても大事です。
利用者さんとスタッフとの、常日頃から”信頼関係がしっかり出来ているのか”ということが介護拒否をするかしないかに大きく関わってきます。
施設に入居する利用者さんにとって、介護職は見ず知らずの人です。簡単には心を開いてくれません。
まずは、利用者さんをよく知ることが大切で、また、自分自身を知ってもらうことも大切です。
利用者さんは立派な大人です。認知症があっても人を見る目は損なわれません。
まずは、「この人になら任せてもいい」と思ってもらえるような信頼関係を築くことが大切です。そうすることで、介護拒否が減ってくるでしょう。
- 日々の生活で、信頼関係を築く
- 会話やコミュニケーションをはかる
- 無理強いはしない
- 利用者さん自身のことをよく知る
- 自分のことを知ってもらう
体調が悪い

介護拒否をされる3つ目の主な原因として、「体調が悪い」ということが考えられます。
認知症や、言葉をうまく伝えられない利用者さんは「介護拒否」を通して何かを伝えようとしているのかもしれません。
例えば、食事を拒否される場合は、「入れ歯が合わない」や「口内が痛い」などがあり、入浴拒否などは、「体が怠い」、「疲れている」、「関節が痛い」などの原因があるかもしれません。
また、薬の副作用が原因も考えられます。
認知症の薬の副作用で、過度に眠気を感じたり、倦怠感を感じることがあります。
利用者さんによっては、体調が悪くても、自分の状況をうまく伝えられない方もいます。
「YES」「NO」など短く簡単に答えられる質問で確認するのが良いです。
「介護拒否」という事実だけを見るのではなく、なぜ拒否しているのかをしっかり観察し、日頃から予防することも重要です。
認知症が原因

介護拒否を経験される介護者の多くは、認知症の利用者さんの対応時が多いと思います。
なぜ認知症になると介護拒否が起こりやすいのでしょうか。
まず一つに、「介助を受ける理由を認識していない」ことがあげられます。認知機能が低下してくると、現状や自分の状況を理解することが難しくなります。
例えば、「服を着替える」という目的が理解できていないと、「突然脱がされる」と思ってしまい、拒否することにつながります。
”服を着替える理由”や”お風呂に入る理由”をわかりやすく伝えることも大事です。
介護をする上で大事なことは、”介護者の一方的な介助にならない”ことです。
「お風呂にいきましょう」「トイレに行きましょう」など、いきなり物事を強制されても「なぜ?」と思い拒否につながります。
まずは世間話から始めて、和んできたら「だんだん暑くなってきて、汗をかいてきましたね。お風呂で汗を流しませんか?」などのように、ワンクッション置いて働きかけることで、納得されることもあります。
- 何をするか何故するのかをちゃんと伝える
- 一方通行に介助にならない
- 突然「〇〇しましょう」と言わない
- 無理強いしない
介護拒否の一番の予防策は「良い関係を築く」こと

介護拒否を防ぐ一番の予防策は「良い関係を築くこと」です。
誰でも、見ず知らずの人や、心を開いていない人に介助をされたいとは思いません。
まず顔見知りになり、挨拶やコミュニケーション、傾聴を通して心を開いてもらい、「あなたになら任せても大丈夫」と思ってもらうことで、安心して介助を受け、介護拒否を予防することができます。
「笑顔で挨拶」は基本だけど一番大事

出勤時と退勤時には、利用者の居室に行き「挨拶」をします。
自分という存在を利用者さんに認識してもらわなければ、何も始まりません。
信頼関係は「挨拶」から始まります。
そこで一言二言会話もしてみてください。利用者さんの興味のあることや、得意なことを「教えてください」と言って話題にすることで、話が弾みます。
挨拶もしない、話も聞いてくれない介護者に、介助の時だけ心を開いてくれるということはあり得ません。
スムーズなコミュニケーションは、まず日頃の「挨拶」から始まります。笑顔も忘れないでくださいね。
こちらから積極的に声かけをしよう

日頃の挨拶によって、利用者さんは「この人はいつも声をかけてくれる優しい人」と認識してくれるようになります。
次は、挨拶だけではなく、会話もこちらから積極的にしましょう。
利用者さんの好きなこと、得意なこと、スポーツや季節の花、イベントの話など抑えておくと、比較的スムーズに会話が弾みます。
毎回話をすることで、利用者さんが何を望み、何に期待をしているかが見えてきます。
施設に入居している利用者さんの中には、孤独な思いや寂しさを感じている方も少なくありません。
話を聞いてあげ、信頼関係を築くことで、安心して介助を受けてくれるようになります。
介護拒否に対する声かけ

●拒否例1「無理強いはしない」

今はしたくない!

じゃあ、あとでしましょう。
●拒否例2「頼ってみる」

お茶なんか飲みたくない!

ごめんね、でも飲んでくれないと私が怒られるの。
●拒否例3「自尊心を守る」

年寄り扱いするな!

じゃあ、自分でやってみましょう。手伝いますから。
ケアプランを見直してみよう

介護拒否をする対応策の一つは「ケアプランを見直す」ことです。
拒否の理由を聞いて(それが本音ではない場合もあります)、それに対応するにはどうしたらいいのか、というカンファレンスを開きます。
その結果ケアプランが変わるかもしれません。
- どうしても異性介助が受けいられない利用者さんについてどうするか
- 特定の職員と相性の悪い利用者をどうするか
- 食事介助を嫌がる利用者さんの本当の原因は何か
- 入浴を嫌がる利用者さんは、なぜ嫌がるのか
- 移乗介助の時に、非協力的な利用者さんはなぜ非協力的なのか
これらの課題を、みんなで話し合い、仮説をたて実験してみて、上手くいかなかったら、また仮説を立て、という繰り返しになります。
そこには他職種の知恵も必要です。
介護の現場だけで悩まず、ケアマネジャーや看護師、機能訓練指導員なども巻き込んでみてください。
まとめ
介護拒否をするのには、何か必ず原因があります。そして、原因は個々により様々です。
なぜ拒否するのか原因を見極め、一人ひとりにあった対応をしていくこと、日頃から利用者さんとの信頼関係を築くことで、介護拒否は改善されていくでしょう。