介護現場では、事故を未然に防ぐためにあらゆる対策をしていますが、それでも完璧に事故をなくすことはできません。
万が一介護現場で事故を起こしてしまった時に、パニックになって正しい行動ができなくなることはよくあります。
そのため日頃から「事故が起きた時はどのように行動すべきか」をマニュアル化することや、研修や講習会を開き、事故が発生した際に正しい行動ができるように準備しておくことが重要です。
このような悩みを持っている方に向けて、「介護事故発生時に必要な対応スキル」をご紹介していきます。
介護現場での事故発生時は最初の対応が重要
介護事故が発生してしまった時は、最初にどのような対応ができるかがとても重要になってきます。
利用者さんが転倒・転落をした時や、喉に者を詰まらせた時に、どのような対応ができるかでその後の展開が大きく変わってきます。
- 【心肺停止】:3分間放置=生存率50%
- 【呼吸停止】:10分間放置=生存率50%
- 【多量出血】:30分間=生存率50%
出血はしているのか、していたらどの程度しているのか。
または、呼吸はしているのか、していなかったら、どのような対応が必要なのか。
実際にその時になって考えても、正しい判断ができない可能性があります。
前もって現場で共通マニュアルを作成し、現場のスタッフ全員で共有し、実際に起きたときのシュミレーションをしておくことや、研修を受けておくことで実際の時に冷静に対応することができます。
私も経験が浅かった頃は、利用者さんが突然急変した時にびっくりしてしまい、どうしていいか分からず正しい対応ができなかったことがあります。
幸いすぐそばに熟練の先輩介護士がいたので、すぐに対応をしてくれ大事には至りませんでしたが、
もし私一人だったら、利用者さんは亡くなっていたかも知れないと思うと、初動がどれだけ大事かが分かります。
こちらの記事では「介護過誤が起こる原因とその予防」について紹介しています。
介護事故の被害を最小限に抑える3つのスキル
事故発生時に必要な基本のスキルを3つ紹介します。
①観察スキル
事故発生時、まず最初に必要なスキルは「観察スキル」です。
観察スキルとは、倒れている利用者さんはもちろん、二次被害の可能性はないか、傷病者自身や周囲の状況を正確に観察できるスキルです。
これらの状況観察は、「③緊急連絡」の際に、事故の状況を正しく伝達するためにも重要です。
②応急処置スキル
次に必要なスキルは、「状況に応じた正しい応急処置のスキル」です。
外傷処置の他にも、喉にものをつまらせた場合のタッピング法やハイムリック法、心肺・呼吸停止の際の心肺蘇生、AEDの使い方などのスキルです。
これらのスキルは、正しいやり方でやってこそ意味があります。
間違った方法ですると、最悪状況が悪化する可能性がありますので、きちんと研修や講習を受けて習得する必要があります。
③緊急時の連絡スキル
次に必要なスキルは「緊急時の連絡スキル」です。
事故発生時に、救急機関や看護師、管理者などへの「電話連絡」に際して、目の前の状況を正しく伝えることができるスキルです。
事故発生時は一刻を争う状況です。
その際に気分が動転していると的確に状況を伝えることが難しくなります。
できるだけ問答の時間を少なくするためにも、日頃から緊急時のことを想定し、「伝えるべき必要事項」を頭に入れておくことが必要です。
※もし、救急か判断に迷った際には、先に管理者に連絡をし、指示を仰ぎましょう。
これらの伝達内容は、現場でマニュアル化し共有しておくとよいです。
こちらの記事では「介護事故が起きる原因とその予防・対策」について紹介しています。
対応スキルの向上の仕方
- ①「観察スキル」
- ②「応急処置スキル」
この二つのスキルの向上には、「専門の研修(講習)」を年に一回受ける必要があります。
①「観察スキル」には、以下のようなスキルが必要です。
- 顔色や外傷の見た目の状況を観察するスキル
- 正しく呼吸や脈拍などの生体反応を観察するスキル
②「応急処置スキル」には、以下のようなスキルが必要です。
- 気道確保や人工呼吸法
- 心肺蘇生やAEDの使用方法
- 異物除去・止血法・回復体位の確保
③「緊急時連絡等のスキル」
「緊急連絡等スキル」を向上させるためには、事故防止委員会で整備したマニュアルをもとに研修する必要があります。
事故発生時の家族とのやり取りの仕方
事故が発生した際は、ご家族や親族へ電話連絡する必要があります。
この時の初動の対応次第で、訴訟などの問題に発展する可能性が出てきやすくなります。対応はしっかり誠意を持ってすることがとても重要です。
- 第一段階家族親族への電話連絡
- 事故が発生した旨
- 現場での状況
- 本人の現在の状況
- 第二段階家族親族を面談
- 医師からの説明などまとめておく
- 本人の容体などの情報を伝える
- 随時対応することを伝え安心してもらう
- 全力で対応する姿勢を明確にする
- 第三段階その後の対応
- サービス提供中の事故を謝罪する
- 今後のやり取りの窓口を明確にする
まず、第一段階の「家族親族への電話連絡」ではパニックにならず冷静に状況をお伝えすることが重要です。
第二段階では、ご家族は本人の容体を一番心配しているので、まずはその点についての情報をきちんと説明しましょう。
その際に安易に「大丈夫です」とは言わないようにしましょう。
また、事故の経緯がどうであれ、道義的責任の上誠意を持て謝罪しましょう。しかし、その際に注意しなくてはいけないこともあります。
話し合いをする前には、シュミレーションをしてどのような問答になるか想定して準備しておくといいでしょう。
まとめ
介護現場で事故が発生した際の初動対応のスキルをご紹介しました。
実際に事故に直面した際に、的確に行動できるように、個人での意識も大事ですが組織全体で準備しておくことが重要です。